特別読み物・コラム
 
2005年度文化講演会「スポーツが創るまちづくり・人づくり」
4.山本解説委員インタビュー(second half)
【新潟と島根の類似点】
(小尾) ご講演ありがとうございました。ここまで山本さんの基調講演を伺って参りました。ここからは僭越ながら私が山本さんにお話を伺わせて頂きます。最後に皆様から質問を受付けますので、ただいまのご講演とこの後のお話を聞きながら質問したいことを考えて頂ければと思います。さて、それでは後半戦を進めていきますが、山本さんはこれまでにも何度か新潟にいらっしゃっていますね。
(山本) 10回以上伺っています。ただし、今回のような講演は初めてで、これまではJリーグやコンフェデレーションズカップのために来ました。私はもともと島根県生まれで、島根と新潟は言葉が非常に良く似ていると思います。おそらく昔から船を通じた取引があったからではないでしょうか。ちなみに、私の先祖は山本屋という酒屋で新潟の酒屋さんからも酒を桶買いしていたそうです。その桶を乗せた船が島根県沖で台風に遭って転覆して、その結果先祖の店が潰れたそうです。転覆した船から桶を引き上げたら桶の中が酢になっていたそうで、私が寿司屋になるためにそうしたのかも知れません(笑)。また、日本海側特有のどんよりとした空の色も島根と新潟は似ていると思います。
(小尾) 言葉が似ているというのはどのあたりでしょうか?
(山本) 新潟弁をしゃべって頂くとわかるのですが…。
(小尾) 私は新潟市出身ですが、例えば「なんなーん」とか言います。
(山本) 「なんなーん」とは、インド料理の食べ物でしょうか?
(小尾) それはナンです(笑)。「何なの?」を「なんなーん」と言うことがあります。また、うちの祖母が語尾に「だすけ」と付けて話すことがよくあります。
(山本) それは幕末の言葉ではないでしょうか(笑)。それは冗談ですが、新潟のお店や居酒屋に行って年配の方とお話をすると、島根とニュアンスが似ていると感じる場合があります。
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【海外での街づくりの具体例】
(小尾) これまでオリンピックやW杯などの実況を通じて海外での取材経験も豊富だと思います。その中でスポーツを通じた豊かな街作りをしている具体例はございますか?
(山本) 大きな大会になるとボランティアが運営補助を行う場合が多く、そのボランティアの母体になっている街はスポーツ施設が充実しています。また、そのような街ではスポーツが生活の一部になっている人も多いようです。アルペンスキーの世界選手権でセストリエール(トリノ五輪会場)という街に行きましたが、その街は狭い谷間にあり、宿泊客にとって決して快適な場所ではありませんでした。しかし、ボランティアの方が経営するお店の中はスポーツの雰囲気が漂っており、そこにいる人々は「スポーツのまま生活をしている」という印象でした。彼等は普通に息をするように、当たり前のことのようにボランティアに参加し、「スポーツの位置付けが普段と少し変わるだけ」という感覚でボランティアに参加しているようでした。

【アルビレックス新潟の盛り上がりについて】
(小尾) アルビレックス新潟の盛り上がりについて山本さんはどのようにお考えですか?
(山本) ジュビロ磐田のホームスタジアム「エコパ」の場合、スタジアムが周囲から孤立している印象があります。それに対し、新潟スタジアムはみんなが自転車や徒歩で行くため、「裾野が広い」というイメージを持っています。
(小尾) 新潟はサッカーが盛んではありませんでしたが、ここまでサッカーが盛り上がった理由について、山本さんはどのようにお考えでしょうか?
(山本) 新潟の方から伺った話では、「これまで新潟にはプロスポーツがなく、みんなスポーツに対して喉が渇いていた」とのことでした。高校野球や高校サッカーも特に強いわけではなかったため、スポーツを受け入れる準備が出来ていたのでしょう。また、一度こだわったら離さないという県民性も一因かも知れません。ところで、長野県では北信と南信、岩手県では南部と津軽の仲が悪いと言われますが、新潟ではどうですか?
(小尾) 新潟県は縦に長いので上越と下越の交流が多くはないですが、特に仲が悪いということは聞きません。むしろアルビレックス新潟という共通の対象を好きになることで、新たな交流が生まれているのではないでしょうか。
(山本) 先日郡山在住の方から、「近々県庁所在地が郡山に移ります。すでに県庁内部で移転が始まっています」と聞きました。福島の方に聞くと、「それは嘘です。そのようなことは20年前から言われています」とのことでした。さらに郡山の方に聞くと、「最近ニュースで見ていませんか?すでに県庁内部のコンピューター部門から郡山に移り始めていますよ」と言われ、福島県庁の教育委員会の方に聞くと、「それはあくまでも噂です」ということでした。福島県は歴史的な中心地の郡山と県庁所在地の福島の仲があまりうまくいってないようです。そういう意味では、新潟は広い県ですが、1つにまとまっていると思います。

【今季のアルビレックス新潟について】
(小尾) 今季のアルビレックス新潟は、いまのところあまりうまくいってないように思います。シーズン前の補強やここまでの戦い方について山本さんのご意見をお聞かせください。
(山本) 去年はもっとひどかったですよ(笑)。開幕のFC東京戦は私もスタジアムにいましたが、「これは困ったな。すぐにJ2に戻って頂かないと」と思いました(笑)。昨年は反町監督の顔が暗かったことを覚えていますが、山口選手は長年の経験からどのあたりでチームが落ち着くかを冷静に分析していました。サッカーは試合中でもシーズン中でも「ずっと悪い」ことはありません。実際、どんなチームでも最初はうまくいかないことが多く、やっているうちに勝てることもあります。そして、結果的に去年は年間10位でした。サッカーは実力差が出ないことがよくあります。自慢ではありませんが、totoは130円が1回当たっただけです(笑)。加茂周さんは1度も当てたことがないそうです(笑)。宮澤ミシェルさんは新聞に予想を出していますが、自分の予想したくじは買わないそうです(笑)。それでも当たったことはないそうです(笑)。
(小尾) 予想は当てにならないということですね(笑)。私の知り合いには1等1億円を当てた方がいますが、その方は「全ては分析に始まる」と話していました。
(山本) NHK水戸の泉浩司アナウンサーは2等を当てたことがあります。その時の配当は40万円という高額でしたが、当選カードが入ったお財布を失くして、かなり落ち込んでいました。私がtotoを買うときは、例えば新潟対FC東京の場合、「反町監督と飲んだから」と言って新潟にチェックを入れ、「原監督と飲む約束をしていたから」と言って東京にチェックを入れます。ほとんどの監督と知り合いで、過去に彼らと一緒に飲んでいますから、結局たくさんチェックを入れてしまいます(笑)。そのため、どうしても一貫性のない買い方をしてしまいます。ちなみに私は1回2000円までにしています。
(小尾) それは山本さんにしか出来ない買い方ですね(笑)。上限を決めているのは奥様に怒られるからでしょうか(笑)?ところで、今シーズンの新潟の予想順位はズバリ何位でしょうか?
(山本) 去年は10位でしたから1桁台の順位であれば良いですね。勝ち数と負け数をイーブンにできるかどうかがポイントです。今シーズンはチーム数が増えた上、W杯予選で他チームに怪我人が出る可能性があるので、単純な予想はできません。
(小尾) 今シーズンの新潟は素晴らしい補強ができたせいで、期待を持ち過ぎているのかも知れません。私達サポーターはここまでのところは「どうなるのかな?」という不安を持っています。
(山本) 今後の新潟がどうなるかは全くわかりません。例えば、過去に東京ヴェルディがエジムンドという素晴らしい選手を補強しましたが、すぐに怪我で戦列を離れてしまいました。今季獲得したワシントン選手も今のところは良いプレーをしていますが、彼が怪我をする可能性もあり、その辺については全く読めません。ただし、「スポーツではネガティブに考えることが一番良くない」ということだけは言っておきます。松木安太郎さんみたいにポジティブに考えるようにしてください(笑)。順位としては、8位ぐらいを前後するのが私の希望です。しかし、「ビッグクラブを倒す」、しかも「ホームで倒す」という試合ができれば、私は13位でもいいと思います。
(小尾) 先ほどのお話にありました「心理的限界」をサポーターの皆様で作れば良いのですね?
(山本) 今度横浜F・マリノスが新潟に来たときに、横浜の選手の汚いプレーで新潟の選手が1人退場し、新潟10人対横浜11人の状況になるとします。その逆境下で新潟が1対0で勝てば皆様スカッとするでしょう?そうなるとメディアの見方も変わり、「なかなかやるじゃないか、新潟。思っていた不安は一掃」と書かれますよ。
(小尾) 新潟の勝利を信じて今後もサポートしていきたいと思います。ところで、山本アナは山口選手にインタビューされたことがあるようですね。
(山本) 横浜フリューゲルス時代から何度かお話を伺っています。加茂周さんが日本代表監督をされているときは山口選手がいろいろなことをこっそり教えてくれました(笑)。テレビというメディアはすべての情報を放送することができないせいか、選手の不満や監督の悩みなどを本人から直接聞くことがよくあります。例えば、アテネ五輪代表の山本昌邦監督はオーバーエイジ枠に真っ先に小野伸二選手を指名しましたが、実は昔はあまり評価していなかったようです。その理由を聞くと、小野選手がディフェンスをしているようで実はあまりしていなかったからだそうです。もちろんそれは過去の話で、今では小野選手は山本監督からも一目置かれる選手になりました。しかし、このような裏事情を知っていても、「監督から信頼されていなかった小野選手からパスが出ました」などと実況できないところがアナウンサーの辛いところです(笑)。

【山本アナ実況の舞台裏】
(小尾) 山本アナのファンが作るサイトがあって、その中に「名言集」があります。ここでいくつかご紹介させて頂くとともに、その際のエピソードを伺いたいと思います。最初はメキシコW杯予選の日韓戦(木村和司選手のFKが決まった試合)での有名な言葉「東京・千駄ヶ谷の国立競技場の曇り空の向こうに、メキシコの青い空が近づいてきているような気がします」です。私はこの「メキシコの青い空」というフレーズを鮮明に覚えていますが、このようなフレーズは全てご自分で書かれるのでしょうか?
(山本) このフレーズは国立競技場メインスタンド裏側のトイレで思いつきました(笑)。あのようなフレーズは中継で最初に映る映像を強めるために話します。NHKの中継で最初に映るのは競技場の遠景で、元日の天皇杯決勝の場合は着物姿の女性の映像が映る場合もあります。いずれにしろ情報的なパワーに欠けるため、その試合の重みやサポーターの気持ちを話すようにしています。そして、必要な言葉はあらかじめ自分の資料用紙の横に書いておきます。あのときトイレで思いついた言葉は、「メキシコ」、「青い空」、「今日は曇り」。それから、「ここは代々木ですか?」と聞いて、「代々木ではないですよ」と言われ、「千駄ヶ谷」と書き込んだことを覚えています。そういう言葉をつなげた結果、あの時のフレーズになりましたが、決して意識して作った訳ではありません。試合当日に天気が変わることもあるので、あらかじめフレーズを決めることはしません。
(小尾) 山本さんのコメントがいろいろなところで取り上げられるため、意識してしまうことはないですか?また、「良いフレーズを言わなければ」というプレッシャーはありませんか?
(山本) 無理をすると出来の悪い言葉になってしまうので、決して無理してフレーズを言わないようにしています。以前に天皇杯岩手県大会決勝の中継を担当した際、地元のサッカー協会の方が間違えて競技場の入口に鍵をかけてしまい、スタンドに観客が全くいませんでした。このときは事前に大げさなフレーズを考えていましたが、とても話せる状況ではありませんでした(笑)。皆様の期待が大きい場合や新聞・ワイドショーが大きく取り上げている場合は、あらかじめフレーズを決めておくのも良いかも知れませんが、原則としては無理をしないようにしています。
(小尾) 次に私が一番好きな言葉を紹介させて頂きます。それはフランスW杯アジア第3代表決定戦の延長戦の前に山本さんが行った言葉「彼らは彼らではありません。彼らは私達そのものです」。
(山本) あのときは岡田監督が腕組みをしながら、ぐるぐる回っていました。そのとき私が考えたことは、「ここで戦っている選手は、どのようにしてここまで来たのか」です。例えば、小学生の50メートル走を考えてみます。クラスの中で自分より早い生徒がクラス対抗の運動会で他のクラスの生徒に負け、そこで勝った生徒が今度は市内の大会で別の学校の生徒に負ける。サッカーの世界でも、そういう形で選ばれてきたのが代表選手です。そういう意味では、そこにいる選手達は自分とは全く違う人間ではなく、自分の代わりにあの場所に行ってもらった仲間です。ですから、「お前ら頑張れ」ではなく、「俺達が頑張るぞ」であり、このような思いからあのフレーズが生まれました。日本代表戦の放送は「縦から放送する」と言われ、実際に日本代表の後ろに立った視点で解説します。使う言葉は「危ない」と「行け」だけで、相手チームのチャンスでも「日本、危ない」であって、「ダエイ、チャンス」とは決して言いません。木村和司さんや横山謙三さんだけでなく、森孝慈さんのようなクールな解説者もみんな「そうだ、行け」という解説になります。
(小尾) 冷静に実況しながら選手と同じ気持ちになるのは難しくないですか?
(山本) そのときはそこにいる選手達、言い換えれば、そこにいる俺達を見て震えが来ました。選手達は先ほど触れた「心理的限界」を越えたギリギリの世界でプレーしており、負けたら這って帰らなければいけないという状況でした。そのことを考えたら、本当に血圧が上がってしまいました(笑)。

【反町監督について】
(小尾) アルビレックス新潟はなぜか監督が目立って人気がありますが、なぜだと思いますか?
(山本) 反町監督は格好良く、理論家風(?)ですね。反町監督も様々な点で悩んでいるようですが、彼の周りには電通サッカー事業部の小森さん(元慶応サッカー部監督)をはじめとして多くの相談相手がいて、困ったときにいつでも相談しているようです。そして、反町監督は非常に強い意志を持っています。負けず嫌いで、向学心旺盛で、「もっとうまくなりたい」、「もっと知識を深めたい」という気持ちを持っている点が良いと思います。
(小尾) 反町監督の人柄はどうでしょうか?
(山本) 反町監督は臆病な方だと思います。もちろん悪い意味ではなく、臆病でないと試合に勝てないという意味です。加茂周さんはよく「大胆細心」という言葉を使います。一見すると豪快に見える加茂さんですが、実はそうではなく、マスコミの前で「今日は攻めやで」と言っておきながら、選手に話を聞くと、「守備の話しかされていません」ということがよくありました(笑)。麻雀の「早下り」でも有名で、加茂さんの弟さん(サッカーショップKAMOの社長)から、「兄貴は勝負をすぐ下りるからダメだ」と言われるぐらいです。しかし、そうでないと本当の勝負には勝てないのかも知れません。反町監督も加茂さんと同じように怖いところが良くわかっているのだと思います。また、反町監督は非常に正直な方で、記者会見で不機嫌なのがすぐ顔に出ます(笑)。
(小尾) 確かに嬉しいときは鼻の下が伸びるのでわかりやすいです(笑)。格好良いのですが…。
(山本) 反町監督は選手時代から格好つけていて、中田英寿に全然かなわないのに、「俺の方が上だ」と譲りませんでした(笑)。そういう意味では今も昔も全然変わりません。また、昔は汚れるのを嫌いました。足が汚れるのが嫌だったようです(笑)。

【W杯最終予選イラン戦について】
(小尾) W杯予選イラン戦が4日後に迫ってきましたが、ズバリ日本代表は勝てるでしょうか?
(山本) 僕は難しいと思います。全部で6試合あるので、勝たなくても良いとは言いませんが、勝てなくてもショックを受けないで下さい。引き分けることができればそれが一番です。サッカーには実力の要素以外に仕組みの要素があります。今度の試合の主管はアジアサッカー連盟(AFC)で、AFCのマーケティング的にはイラン代表が勝って代表決定が6戦目までもつれた方が好都合です。また、イラン代表がホームで負けるとブンデスリーガで活躍しているイラン選手のブランド価値が下がり、イラン代表の親善試合が組まれなくなる可能性があります。親善試合の利益の一部がFIFAやAFCに上納されることを考えても、AFCの経営上はイラン代表が勝った方が好都合です。そういう意味では、「日本を北中米とのプレーオフに回せばさらに放映権料が得られる」という考え方もありますが、最終的には日本がドイツに行かないとAFCが損をするのは確かです。ここまで考えるのは少し読み過ぎかも知れませんね(笑)。もちろん、相手を実力で叩き潰すのがサッカーの試合ですから、日本の勝利を期待するのは当然であり、ぜひ勝って欲しいと思います。しかし、日本が負けても全く心配することはありません。
(小尾) そういうこと(試合以外での勝敗のコントロール)が本当にできるのですか?
(山本) 例えば審判については、マレーシア人のサレーという国際主審が日本戦で笛を吹く可能性が残っています。この方はアジア杯ヨルダン戦でPKをひっくり返した人ですが、ジーコ・ジャパン初勝利の後に日本で行われた韓国戦を吹いたのもサレー氏です。このときは安貞桓に決められて0−1で負けました。というわけで、サレー氏が審判をやると必ずしも日本にプラスにはなりません。サレー氏がどの試合で笛を吹くかで日本が大事な勝点を取り損なうかも知れません。いずれにしろ今度のイラン戦は勝てば笑えばいいのですが、負けても泣く必要はありません。仮に負けた場合でも、イランは勝点4、日本は勝点3です。その次のバーレーン戦で日本が勝ってイランが北朝鮮に負けたら、イランは勝点4のままで、日本は勝点6になります。このように1試合毎に状況が変わるので、全6戦中での位置付けを考えてイラン戦は肩の力を抜いて見て下さい。
(小尾) 実力的には日本の方が上でしょうか?
(山本) それはわかりません。というのも、例えば中村俊輔が削られて前半で交代したらどうなるでしょうか?あるいは、先日のアジア杯で遠藤に出されたレッドカードのようなケースもあります。いずれにしろ、1対0のような点が入らない試合になると思います。

【最後に】
(小尾) 山本さんの予想は1対0。覚えておきましょう(笑)。最後になりますが、サッカーだけでなくスポーツとの共存・共栄について、これからの新潟が進むべき方向性についてのご提案をお願いします。
(山本) 「学校を大事にしてほしい」というのが私の意見です。日本ではヨーロッパ型のクラブ組織を目標にしているケースが目立ちますが、ヨーロッパの人達は日本の良さとして学校を挙げます。その理由として、ヨーロッパの体育は体を動かすことを第一にしているのに対し、日本の体育ではきちんと競技を教えているからです。また、学校には部活があり、少年団やクラブなどのスポーツ組織も学校をベースとしています。そういう意味では、学校との関わりをいかに深く、広くできるかで、今後のスポーツの状況が変わるでしょう。また、学校から撤退してクラブだけでスポーツをさせるという方向性は、日本の伝統的な長所を捨ててしまうことになります。学校の良さをうまく活かして、他地域の見本となることが今後の新潟のスポーツにとって大事です。
【会場のお客様からの質問】
(小尾) 最後にロスタイムとして会場の皆様のご質問を受付けたいと思います。
(山本) 魚の質問でも、寿司の質問でも何でも結構です(笑)。
(お客様A) 以前、山本さんがフィギュアスケートのカタリーナ・ビット選手に通訳なしでインタビューされていた姿が非常に記憶に残っております。外国の有名選手で印象に残っている方がいらっしゃったら教えて下さい。
(山本) ACミランのパウロ・マルディーニ選手。彼がまだ18歳のときに彼の車で実家まで行ったことがあります。当時の彼は英語が話せず苦労しました(笑)。そして、お父さんのチェザーレ(後の代表監督)、お姉さんと一緒に彼のお母さんの手料理を頂きました。その後、彼がトヨタカップで来日した際にはお土産を持っていくなどの交流が続いています。彼の行動や発言を見続けていると、世界レベルの成長を感じることができます。そして、世界のトップクラスの人は自分なりの世界観・スポーツ観を持って話をしていることがわかります。そういう意味で、日本の選手も世界を見ながら追いついてほしいですね。あとはマラドーナ。W杯メキシコ大会とイタリア大会で取材を行いましたが、メキシコ大会の彼は本当に輝いていました。取材に行くと、特に南米のメディアが彼に紙を持って近づいていくのですが、それは取材じゃなくサインをもらっているのです。僕もノートを出してサインをもらってしまいました(笑)。本当に凄い選手です。

(お客様B) もう少し山本アナの実況を聞きたいのですが、もう実況されることはないのでしょうか?特に、日本代表戦の実況はないのでしょうか?
(山本) (実況をやりたいと)手を挙げていますが、なかなか私に当ててくれません(笑)。今度2年ぶりにW杯のアルゼンチン対コロンビア戦が当たりまして、近日中に放送されるはずです。錆びてなければ、その後も声が掛かるのではないでしょうか。また、日本代表戦も私に当てるように咳払いをしていますが(笑)、なかなか当ててくれません。おそらくドイツW杯に向けて若手の育成を重視しているからでしょう。とにかく民放も含めてサッカーのアナウンサーのレベルは本当に高くなりました。そして視聴者やサポーターのレベルも高くなりました。Jリーグ開幕戦の横浜マリノス対ヴェルディ川崎戦を中継していた際、「視聴者のおばあちゃんから『オフサイドラインがわからない』という電話が来た」というメモが横から出されました。スイッチを切ってその理由を聞いたら、「オフサイドラインがどこに引いてあるのか教えてくれ」という意味だったのです(笑)。昔はそういう時代でした。

(お客様C) バスケットの新潟アルビレックスがリーグを脱退し、さいたまと一緒にbjリーグというプロリーグを立ち上げます。スポーツ雑誌のコメントは賛否両論で、悲観的なことが書いてある場合もあります。僕らとしては成功して欲しいと思っていますが、このような新しいプロリーグの動きをどう思いますか?
(山本) bjリーグについては、新潟アルビレックスの河内GMや他チームの監督からいろいろお話を伺っています。どんなスポーツの世界でも強いチームは組織の改編にはあまり関心がないもので、現状ではbjリーグとスーパーリーグと話し合いの溝が埋まっていません。この仲立ちが出来るのは今のところJOCしかないと思いますし、逆にJOCがきちんと仲立ちしないとバスケットボールへの夢を壊すことになります。bjリーグとスーパーリーグは、どちらか一方がプラスで、もう片方がマイナスということはないと思います。ですから、その長所短所をはっきりとさせるためにも、メディアはもっと努力する必要があります。いずれにしろ、今後きっと良い形になると信じています。
(小尾) ロスタイムということで皆様の質問を受付けてきましたが、そろそろお別れの時間が近づきました。今日は長時間にわたり貴重で楽しいお話を本当にありがとうございました。最後に山本さんの今後のご活躍、そして日本代表戦での実況を期待します。どうぞ大きな拍手をお願い致します。
(山本) どうもありがとうございます。私の活躍よりも、まずアルビレックス新潟、そして日本代表の活躍を期待したいと思います(笑)。

 
 
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