2002年3月、オーストリアのウィーン大学にて開催された
スポーツ社会学学会の東アジア・フットボール研究に関するレジュメより、
立命館大学の山下教授グループの研究発表
『新潟のサッカー振興グループ“Alliance2002”に関するレポート』



サッカー・サポーター・グループの可能性−W杯開催地(新潟)の事例から
The Potentiality of Soccer Supporter Group
:The Case at A Venue Of The 2002 FIFA WorldCup
棚山 研(立命館大学) TANAYAMA,KEN (Ritsumeikan University)



はじめに
 2ヶ月後に迫ったサッカー・ワールドカップ日韓共催大会(以下、サッカー・ワールド カップを「W杯」と略記)に向けて、様々なサッカー愛好者や開催地市民の動きが活発に なっている。

 また、「Jリーグ百年構想」(96年)に代表されるように、Jチームを軸 にした市民スポーツ文化の振興が呼びかけられ、サポーター・グループもまた、単なる応 援団の域を超えて、「J2チームではボランティアの力が無ければ試合運営ができない」 (HQのインタビュー記録より)と言わしめるほどの実質的な支援を行っていて、これが浦 和、鹿島、磐田、清水の事例で報告されているように、市民レベルでの「サッカー文化」 の定着につながっている地域も存在する。

 W杯招致は諸々のビッグ・イベントと同じく、地元にとって狭い意味での「インフラ整 備」あるいは「経済効果の起爆剤」として捉えられ、そのコインの両面のように「税金の 無駄遣い」との批判もされてきた。しかし、そのような思惑や批判とは別の次元で、地元 開催されるW杯を貴重な機会と捉えて、「地元の地域性をアピールしよう」、「サッカー 文化を定着させよう」という市民レベルでのボランタリスティツクな動きも生まれている。

 他方で、近年崩壊著しい地域社会の担い手として、非営利活動団体(以下、NP0)やボ ランタリーアソシエーション(以下VA)への期待が高まっている。スポーツ振興の分野も、 特定非営利活動促進法の12の活動分野の一つに位置付けられていて、「成岩スポーツクラ ブ」(愛知県半田市)のように全国的注目を集めるNPO法人も現れている。しかしながら、 NPO全体として、ミッション(社会的使命)を堅持しつつ財源、人材を確保し運営を続け ていくことが大きな課題となっている。

 以上のような認識を前提としつつ、本報告では、今回日本海側で唯一W杯の試合開催地 となった新潟のサポーターグループ「Alliance2002」(以下、Alliance)に注目した。 Allianceは「サッカーを通じて市民文化の創造・育成を」目指す組織として活動している (メンバーの名刺より)。新潟には、99年J2リーグに参加したアルビレックス新潟FC (以下、「アルビレックス」)があるのは事実だが、サッカーに関しての地域的蓄積はほ とんど無いといって良い。その新潟のAllianceが全国のサポーターグループの中でも非常 にユニークな活動を行っており、まもなく特定非営利活動法人格(NPO法人格)も取得す る方向で活動を定着させようとしている。

 本報告では、Allianceの活動実態を紹介するとともに、それを支えている幹事役=「ヘ ッドクオーター」(以下HQ)がいかなる社会的背景から生み出されているのか、彼らの活動 の現状認識や組織的・個人的展望について、主にインタビュー調査の結果およびAlliance ホームページの掲載資料から見ていきたい。さらに、Allianceの発展可能性についても、 推測可能な範囲で言及する予定である。

Contents ※下記項目をクリックすると、論文内容をご覧頂けます。

1.新潟とサッカー
2.「Alliance2002」の活動経過と活動概要
3.「ヘッド・クオーター」の担い手意識
4.Alliance2002の安定的運営への可能性
5.まとめにかえて
6.補足(主要参考文献・ホームページアドレス)
※当日のタイムテーブル


 
 
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